オフィス移転計画の完全ガイド! 計画から実行、移転後の運用までを徹底解説

オフィスの移転は、企業の成長や働き方の変化に合わせた重要な転機です。しかし「どのくらい前から計画すればよいのか」「何から手をつければよいのか」といった不安を抱える担当者も少なくありません。

そこで本記事では、オフィス移転を円滑に進めるための基本計画を解説します。オフィス移転を検討中の方は、ぜひ参考になさってください。

オフィス移転にかかる期間の目安

オフィス移転の準備期間は、企業の規模や移転内容によって大きく異なります。新しい物件探しから契約、レイアウト設計、内装工事、引っ越しし、旧オフィスの原状回復まで、複数の工程を順に進める必要があるため、想定よりも長期化するケースが一般的です。

目安としては、以下のように規模別で期間を見積もると現実的です。

  • ・大規模オフィス(約3,000坪):検討開始から完成まで約2年。複数フロアにまたがる設計や新築ビル入居が伴う場合、計画段階から長期的なスケジュール設計が求められます。
  • ・中規模オフィス(約500坪):1年〜1年半を目安に検討を進めます。レイアウトや設備要件の調整、関係部署や業者間の調整が多く、余裕を持った工程管理が必要です。
  • ・小規模オフィス(約70坪):半年程度での計画も可能ですが、物件契約や設計会社・施工会社の調整を早期に行うことがスムーズな進行の鍵になります。

また業種や業務内容によっても期間は変動します。製造業やIT企業のように専門機器の設置・移設が必要な場合や、デザイン性の高い内装を伴う場合は、さらに時間を要する傾向があります。

移転を「できるだけ早く」と焦るのではなく、工程ごとの余裕を持たせたスケジュールを組むことが重要です。

オフィス移転計画【準備編】

オフィスの移転が決定したら、以下の手配を計画に練り込む必要があります。

  • ・プロジェクトチームの立ち上げ
  • ・移転する目的の明確化
  • ・新オフィスの選定・契約
  • ・現オフィスの解約手続き
  • ・原状回復工事の手配
  • ・新オフィスの設計・レイアウト決定
  • ・業者の選定・手配

それぞれ詳しく見ていきましょう。

プロジェクトチームの立ち上げ

オフィス移転は、総務担当だけで完結するものではありません。円滑な進行には、部門をまたいだプロジェクトチームの設置が欠かせません。中心となるのは、移転計画を統括するプロジェクトリーダーです。経営層や意思決定者と密に連携し、全体スケジュールや費用を管理する役割を担います。

チームメンバーは、以下のように部門横断で構成するのが理想です。

  • ・総務部門:全体管理・業者との調整
  • ・経理部門:予算立案・支出管理
  • ・IT部門:ネットワークや機器移設の計画
  • ・営業・人事部門:業務への影響の調整や従業員対応

こうした体制を整えることで、情報共有がスムーズになり、工期やコストのリスクを最小限に抑えられます。また外部の不動産会社や設計会社、施工業者とも早期に連携し、定期的に進捗確認のミーティングを行うと安心です。複数部署が関わる大規模なプロジェクトほど、チーム運営の透明性とスピード感が成功の鍵となります。

移転する目的の明確化

オフィス移転を成功させるには「なぜ移転するのか」という目的を明確にすることが大切です。目的があいまいなまま進めると、物件選定やレイアウト設計の方針がぶれてしまい、結果的に社員の満足度や生産性が低下する恐れがあります。

代表的な移転目的としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ・生産性の向上:動線改善や最新設備の導入による業務効率化
  • ・コスト削減:家賃・光熱費・維持費の見直し
  • ・採用強化・ブランド向上:デザイン性の高いオフィスによる印象アップ
  • ・働き方改革への対応:フリーアドレスやABW(Activity Based Working)など多様な働き方の導入

また現オフィスの課題を整理することも重要です。スペース不足、老朽化、アクセスの不便さなど、社員へのアンケートやヒアリングを通じて課題を可視化すると、移転の方向性を客観的に判断できます。

経営層を交えた議論を重ねて全社で合意形成を行うことで、意思決定がスムーズになり、移転後の満足度も高まります。目的が明確であれば、デザイン会社や施工業者にも意図が伝わりやすく、プロジェクト全体の一貫性を保てるでしょう。

新オフィスの選定・契約

新オフィスの選定は、オフィス移転計画の成否を左右する重要な工程です。立地や交通アクセス、周辺環境は社員の通勤利便性や採用活動、企業イメージにも大きく関わります。最寄り駅からの距離や周辺施設の充実度、来客のしやすさなど、複数の観点から検討することが大切です。

また物件を比較する際は、広さやレイアウトの自由度、賃料・保証金・共益費・更新料といったコスト面を明確に把握しておきましょう。さらに、セキュリティ体制、耐震性能、共用部の清掃・管理状況など、日常的な快適性や安全性も重視すべきポイントです。

候補物件が複数ある場合は、図面や見積もりを基に比較検討し、内見チェックリストを活用して客観的に評価します。契約時には、特約条項や原状回復の範囲、中途解約の条件などを必ず確認し、入居時期や工事区分を明確にしておくことが重要です。不動産会社や専門業者と連携しながら、納得のいく契約を結ぶことが、後悔のない移転につながります。

現オフィスの解約手続き

新オフィスの契約が決まったら、並行して現オフィスの解約手続きを進めます。多くの賃貸借契約では「6カ月前までに解約予告を行う」ことが条件となっているため、スケジュールを逆算して早めに着手することが大切です。

まずは賃貸借契約書を確認し、解約通知の期限、違約条項、提出方法(書面・メール可否)を把握しましょう。特に、契約によっては書面での通知が必須となる場合があるため、口頭連絡だけで済ませないよう注意が必要です。

解約の流れは「書面による通知→貸主への提出→控えの保管」が基本です。通知後は、退去日や引き渡し日を明確にし、原状回復工事や敷金返還のスケジュールも確認しておきましょう。

手続きの遅れは違約金や退去日重複のリスクにつながるため、社内外での情報共有と早期対応が欠かせません。契約条件をしっかり理解し、トラブルのない円滑な退去を目指しましょう。

新オフィスの設計・レイアウト決定

新オフィスの設計・レイアウトは、移転の目的を形にするフェーズです。まずは部署の配置や通路の動線などを考える「ゾーニング」を行い、オフィス全体のコンセプトを明確にします。

執務室、会議室、休憩スペース、来客対応エリアなど、機能ごとに空間を整理し、社員が快適に働ける環境づくりを意識しましょう。社員アンケートやヒアリングを実施し、現場の意見を取り入れることも有効です。また来客スペースと社内スペースを分ける設計や、配線・通信環境を整えることで、利便性とセキュリティを両立できます。

最近では、働き方の多様化に合わせてABW(Activity Based Working)やハイブリッドワークに対応したオフィスが注目されています。図面を基に複数案を比較し、シミュレーションを重ねながら最終案を決定しましょう。

理想を追い過ぎず、実際の運用やコストバランスを意識することが、長期的に満足できるオフィスづくりのポイントです。

業者の選定・手配

オフィス移転には、引っ越し業者・内装業者・ITインフラ業者・什器手配業者など、複数の専門会社が関わります。まずは、自社で対応できる範囲と外部委託すべき業務を整理し、全体のスケジュールを可視化することが重要です。

業者選定の判断基準は、費用だけではなく、実績・対応品質・サポート体制など多角的に評価することがポイントです。特にITや通信設備の構築は専門性が高いため、早めの相談と事前調整が欠かせません。

また複数業者への見積もり比較(相見積もり)を行うことで、コストの妥当性を確認できます。スケジュールや窓口を一本化できる「一括対応業者」を利用すれば、手間の軽減にもつながります。ただし、契約内容や工事範囲の確認は怠らず、トラブルを未然に防ぐ姿勢が大切です。信頼できるパートナーを選定することで、移転全体をスムーズに進められるでしょう。

原状回復工事の手配

退去時には、借りた当初の状態に戻す「原状回復工事」を行う義務があります。工事の範囲や費用負担の有無は、契約書に明記されているため、まずは内容を確認しましょう。貸主指定の業者がある場合はその条件に従う必要がありますが、自社で手配できるケースもあります。

複数の施工会社に見積もりを依頼し、費用・工期・施工範囲を比較検討することで、適正な契約が可能です。特に「入居時の現状確認書」や写真記録があれば、返却時の状態確認に役立ちます。

工事が完了したら、貸主との立ち会い検査を行い、修繕箇所や仕上がりを確認して引き渡します。ここで不備があると再工事が必要になる場合もあるため、余裕を持ったスケジュール設定が望ましいでしょう。

原状回復はコストが発生しやすい項目ですが、事前準備と記録管理を徹底すれば、トラブルを防ぎつつスムーズに退去できます。

オフィス移転計画【実行編】

オフィス移転の準備を終え、引っ越しが間近に迫ると、さらに慌ただしい日々が続きます。このフェーズでは以下の2点を計画します。

  • ・社内・社外への通知
  • ・工事・引っ越し作業

それぞれ詳しく見ていきましょう。

社内・社外への通知

オフィス移転を円滑に進めるためには、早期の情報共有が欠かせません。まずは社内向けに説明会を実施します。移転の目的や新オフィスのコンセプト、スケジュール、各部門の作業分担などを明確に伝えましょう。説明会では、社員からの質問に対応できる窓口を設け、FAQ形式で共有しておくと混乱を防げます。

また各部署ごとに備品整理や廃棄物の仕分け、引き継ぎ項目を確認し、引っ越し当日に向けた作業マニュアルを整備します。社内での連絡体制を明確にしておくことで、移転直前のトラブルを減らせます。

社外への通知も同様に重要です。取引先や顧客、官公庁などへの住所変更連絡は、移転3カ月前には開始し、1カ月前までに完了させるのが理想です。

具体的には、請求書送付先や契約書住所、名刺・封筒・伝票などの印刷物、Webサイトの会社情報欄などを順次更新していきます。社会的信頼を損なわないためにも、正確かつ丁寧な対応を心がけましょう。

工事・引っ越し作業

移転3カ月前を過ぎると、工事と引っ越し作業の調整が中心となります。まずは、引っ越し業者の最終選定を行い、スケジュールを確定させましょう。並行して、什器や備品の整理・廃棄を進め、新オフィスで使用する家具や設備の購入計画を立てます。

内装工事のスケジュール調整もこの時期に行います。施工期間は通常1~2カ月を要するため、3カ月前の段階で図面確定と発注を済ませておくのが理想です。電話・ネット回線などの通信インフラは開通までに1カ月前後かかるため、早めに工事予約を入れておきましょう。

移転1カ月前には、内装がほぼ完成し、施主検査を実施します。この際、設備や動線、照明などに不備がないかを確認してください。原状回復工事も並行して進め、退去準備を整えます。移転当日は、荷物の運搬・設置・動作確認を業者と連携しながら行い、IT機器や通信環境のトラブルに備えてサポート体制を確保します。

オフィス移転計画【移転後の管理・運用編】

移転当日を迎えても、計画はそれで終わりではありません。移転完了後は管理・運用のフェーズに入り、公的機関や取引先への対応を抜かりなく進めることが重要です。

  • ・各種届出・手続き
  • ・運用体制の整備と効果検証
  • ・旧オフィスの明け渡し

以下で詳しく解説します。

各種届出・手続き

オフィス移転後には、多くの届出や契約変更が必要になります。まず、官公庁への届出として、以下の手続きを早めに行いましょう。

届出先 必要な手続き(期限)
法務局 ・本店移転登記申請書(移転後2週間以内)
税務署 ・事業年度・納税地・資本金額等の異動届出書(移転後速やかに)
・給与支払事業所の開設・移転・廃止届出書(移転後1カ月以内)
都道府県税事務所 ・事業開始等申告書(移転後1カ月以内)
労働基準監督署 ・労働保険名称・所在地等変更届(移転日の翌日から10日以内)
【労働保険の成立手続き関連】
・労働保険概算保険料申告書(保険関係の成立日から50日以内)
・労働保険確定保険料申告書(保険関係の消滅日の翌日から50日以内)
・労働保険関係成立届(保険関係の成立日の翌日から10日以内)【労働基準法関連】
・適用事業報告(移転後速やかに)
・就業規則(変更)届(移転後速やかに)
・時間外労働、休日労働に関する協定届(移転後速やかに)【労働衛生法関連】
・安全管理者選任報告(移転後速やかに)
・衛生管理者選任報告(移転後速やかに)
・産業医選任報告(移転後速やかに)
社会保険事務所 ・適用事業所名称/所在地変更(訂正)届(原則移転から5日以内)
消防署 ・防火対象物工事等計画届出書(工事開始の7日前)
・防火対象物使用開始届出書(使用開始の7日前)
・防火管理者選任(解任)届出書(入居日までに速やかに)
郵便局 ・郵便物届出変更届(移転後速やかに)
公共職業安定所 ・事業主事業所各種変更届(移転日の翌日から10日以内)

これらの手続きはそれぞれ期限が異なるため、チェックリストを作成し、担当部署ごとに進行管理を行うと効率的です。

またインフラや通信、金融機関などの契約先にも住所変更を届け出ます。電気・ガス・水道・通信回線・リース契約などは業務に直結するため、移転当日までに確実に切り替えを完了させましょう。名刺や封筒、社印、Webサイトの会社概要、メール署名なども速やかに更新します。

移転当日は、業者の立ち会いによる動作確認や不具合対応を行い、竣工図面や契約関連資料は社内で安全に保管します。届出・手続きを怠ると、法的トラブルや郵送物の誤送につながる可能性があるため、最終チェックを徹底することが大切です。

運用体制の整備と効果検証

オフィスの移転は完了がゴールではなく、移転後の運用体制づくりが新たなスタートです。

まずは、各部門での役割分担や運用ルールを明確にし、円滑な業務体制を整えましょう。新オフィスの利用方法や設備の使い方、会議室の予約ルールなどをまとめたマニュアルを整備し、全社員に共有することが大切です。これにより、移転後の混乱やトラブルを防ぎ、スムーズな業務再開が実現します。

さらに、移転後の効果を検証する取り組みも重要です。働き方や生産性、コミュニケーションの活性化、コスト削減など、移転前後の変化を具体的に評価します。アンケートやサーベイツールを活用し、社員の声を収集することで、改善点や新たなニーズを把握できます。半年〜1年ごとに定期的に振り返りを行い、オフィス環境を継続的に改善していく姿勢が理想です。

旧オフィスの明け渡し

原状回復工事が完了したら、旧オフィスの明け渡し手続きを進めます。多くのケースでは、移転1カ月前を目安に工事を完了させ、貸主による現場立ち会い検査を行います。施工内容や修繕箇所を確認し、指摘があれば速やかに対応しましょう。

明け渡し時には、鍵やセキュリティカードを返却し、貸主から「引渡確認書」などの書面を受領して完了を証明します。工事で発生した廃材は、産業廃棄物として法令に従って適切に処理します。契約書に定められた「明け渡し期限」と実際のスケジュールを照らし合わせながら、作業が遅延しないよう管理することが大切です。

また原状回復が遅れると、日割り賃料や延滞金が発生する場合もあるため注意が必要です。全ての工程を終えた後は、貸主との合意内容を記録として残し、トラブル防止につなげましょう。明け渡しは移転の最終段階であり、誠実で丁寧な対応が信頼関係の維持にもつながります。

まとめ

オフィス移転を成功させるためには、「計画性」「情報共有」「早期着手」「専門家の活用」が欠かせません。目的の明確化から物件選定、工事・引っ越し、移転後の運用体制整備までを段階的に進めることで、トラブルを防ぎ、スムーズな移転を実現できます。

また移転は終わりではなく、新しい働き方をスタートさせる機会でもあります。社員が快適に働ける環境づくりや業務効率の向上を意識し、移転後も継続的な改善を続けましょう。

株式会社ブレインズ・ネットワークが運営する「事務所移転.com」では、物件探しから原状回復、レイアウト設計、引っ越しまでワンストップでサポートしています。移転準備の流れや最適な進行時期を確認したい方は、ぜひこちらから詳細をご確認ください。

事務所移転コラム編集部
この記事を書いた人

事務所移転コラム編集部

東京を中心にオフィス移転、事務所移転事業を展開する事務所移転.comのコラム編集部です。最新のトレンドや、役に立つ情報を中心に、幅広い情報をお届けします!

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