近年、働き方の多様化が進む中で注目を集めているのが「サードプレイスオフィス」です。これは自宅（ファーストプレイス）や職場（セカンドプレイス）に次ぐ第三の働く場所を指し、カフェやコワーキングスペース、自社が設けたサテライト拠点などが該当します。
社員の集中力向上やリフレッシュ効果が期待できるほか、通勤時間の削減によるワークライフバランスの改善、生産性の向上にもつながります。本記事では、サードプレイスオフィスの定義や種類や導入時のポイントを解説します。

サードプレイスオフィスが注目されている理由

近年、働き方の多様化に伴い「サードプレイスオフィス」が注目を集めています。サードプレイスとは、自宅（ファーストプレイス）や会社（セカンドプレイス）以外の第三の場所を指し、カフェやコワーキングスペースのような自由で柔軟な環境がその代表例です。
従来のオフィスにとらわれないこの新しいワークスタイルは、創造性や生産性の向上、ストレス軽減、ワークライフバランスの実現といった多くのメリットをもたらします。企業にとっても人材確保や離職防止の観点から導入を検討するケースが増えています。

サードプレイスオフィスの導入メリット

企業にとっては従業員の生産性向上や離職防止、柔軟なワークスタイルの推進といったメリットがあり、リモートワークやハイブリッド勤務と相性が良いのも特徴です。
ここでは、サードプレイスオフィスの導入メリットを3つ紹介します。

働く場所の選択肢が増えることでの柔軟性向上

従来のオフィス勤務に加えて、自宅やカフェ、コワーキングスペースといった多様なワークプレイスを活用することで、通勤時間の短縮や生産性の向上、ワークライフバランスの改善が期待できます。
特に、時間や場所に縛られない働き方は、子育て世代や介護中の社員にもメリットが大きく、離職防止や人材確保にもつながります。また、企業にとっても、柔軟な勤務形態を提供することで、従業員満足度を高め、組織のエンゲージメント強化につなげることができます。

ストレス軽減とクリエイティビティ促進

従来のオフィス環境とは異なる柔軟で自由な空間設計が、社員の精神的な緊張を和らげ、リラックスした状態での業務遂行を可能にします。さらに、開放的で多様なレイアウトや他業種との交流が生まれやすい設計により、アイデアが自然と広がりやすく、創造性の向上にもつながります。

離職防止・エンゲージメント強化への寄与

オフィスでも自宅でもない第三の居場所として機能するこの空間は、働きやすさや心理的安全性を提供することで、離職防止やエンゲージメントの強化に大きく貢献しています。固定化された業務環境を離れ、自由度の高い働き方ができることで、従業員のストレス軽減や創造性の向上も期待できます。
また、リラックスした空間でのコミュニケーションが活性化し、チーム内の信頼関係も強化されるため、結果的に職場への愛着や帰属意識が生まれるでしょう。

導入時の注意点と課題

新しいシステムやサービスを導入する際には、期待される効果や利便性ばかりに目が向きがちですが、成功の鍵を握るのは「導入時の注意点と課題」への正しい理解と対策です。
適切な準備や事前調査が不足していると、想定外のトラブルやコストの増加、社内の混乱を招く恐れがあります。特に、現場の業務フローとの整合性、従業員への教育、既存システムとの連携、導入後の運用体制など、検討すべきポイントは多岐にわたります。
ここでは、サードプレイスオフィスを導入するときの注意点と課題を3つ紹介します。

コストとROI（投資対効果）

新しいシステムやサービスを導入する際、多くの企業が直面するのが「コストとROI（投資対効果）」の問題です。初期費用やランニングコストがかかる中で、その投資がどれほどの利益や効率化をもたらすのかを見極めることは非常に重要です。
特に中小企業にとっては、予算に限りがあるため、無駄な出費は避けたいところです。しかし、短期的なコスト削減だけを重視すると、長期的なROIを見逃すリスクもあります。費用対効果を正しく評価するには、導入前の綿密なシミュレーションや、業務改善の具体的な数値化が求められるでしょう。

セキュリティや情報管理体制の整備

クラウドサービスや外部ツールの導入においては、社内外の機密情報や個人情報が漏洩するリスクを最小限に抑えるための準備が不可欠です。セキュリティポリシーの策定やアクセス権限の適切な設定、データの保存場所やバックアップ体制の確認など、事前に整備すべき項目は多岐にわたります。また、従業員への情報リテラシー教育も重要なポイントです。

利用率の低下リスクとその対策

新しいシステムやツールを導入しても、実際の現場で十分に活用されなければ、その投資効果は大きく損なわれてしまいます。社員が使いこなせなかったり、業務フローに馴染まなかったりすることで、利用が徐々に減少し、最終的には形骸化してしまう恐れもあります。こうしたリスクを回避するためには、導入前の周知徹底、トレーニングの実施、現場の声を反映した運用設計などが不可欠です。

サードプレイスオフィス導入のステップ

働き方改革やハイブリッドワークの普及により注目を集める「サードプレイスオフィス」。自宅や本社以外の第三の仕事場として、社員の生産性向上やコミュニケーションの活性化を図れる新たなオフィス形態です。
しかし、導入には戦略的なステップを踏むことが不可欠です。ここでは、サードプレイスの導入ステップを紹介します。

社内ニーズ調査とコンセプト設計

社員が本当に求めている働き方やオフィス機能を把握することで、形だけの空間ではなく、実際に活用される環境を整えることが可能になります。
アンケートやヒアリングを通じて業務課題や理想の働き方を明確にし、それに基づいたコンセプトを設計することで、快適性と生産性の両立を実現できます。

パートナー企業やスペースの選定

立地、設備、利用可能時間、セキュリティ環境、費用対効果など、多角的な視点で比較検討することで、従業員にとって快適かつ生産性の高い環境を実現できます。
また、導入後のサポート体制が整っているかどうかも判断基準の一つです。最近では柔軟な契約形態や多様な施設タイプを提供する企業も増えており、自社の働き方にマッチする選択肢が広がっています。

利用ルールの策定とトライアル導入

柔軟な働き方を推進する一方で、ルールが曖昧なままでは混乱や不公平が生じる恐れがあります。業務内容や従業員のニーズに応じたガイドラインを設けることで、誰もが安心して活用できる環境を整えることが重要です。また、短期間のトライアル導入を実施することで、運用上の課題を事前に把握し、最適な運用体制を構築するための貴重なフィードバックが得られます。

まとめ

居心地の良い“第三の場所”として注目されるサードプレイスオフィスの導入は、社員のストレス軽減やキャリア継続、離職防止といった効果が期待できるだけでなく、生産性やモチベーションの向上にもつながります。
自宅でもなく従来の職場でもない新たな選択肢が、柔軟な働き方を支援し、社員一人ひとりの多様なライフスタイルに適応する手段となり得ます。これからのオフィス戦略を立てるうえでは、いかに社員にとって心理的・物理的に働きやすい空間を提供できるかという視点を持つことが重要です。