50坪のオフィスレイアウトはどうしたらよい? 考え方や注意点も解説
50坪のオフィスは、中小企業にとって「広過ぎるかもしれない」「人が増えたら手狭にならないか」などと悩みやすい規模です。快適性や効率性、来客対応までをバランスよく実現できるかどうかは、レイアウト次第といえます。
そこで本記事では、50坪で働ける人数の目安やレイアウトの考え方、おすすめのレイアウト例などを紹介します。オフィス移転を検討している方はぜひ参考になさってください。
目次
50坪のオフィスは何人向き?
オフィスの広さを検討する際には、一人当たりに必要な面積の基準を押さえることが大切です。労働安全衛生法および事務所衛生基準規則では「1人当たり10㎥以上」と定められており、天井高が約2.5mだった場合の1人当たりの床面積は約4㎡、つまり約1.2坪に相当します。
この基準はあくまで最低限の広さであり、快適性を確保するには一般的に2.5〜3坪前後が目安とされています。これを基準に考えると50坪のオフィスにはおおよそ16~20名が収容可能です。
ただし、この人数は50坪のうち全てを執務室にする場合に限られます。会議室や休憩室を設ける場合は、さらに少なくなるでしょう。
50坪のオフィスに移転する際のレイアウトの考え方

ここからは、50坪のオフィスで快適な環境を作るためのレイアウトの考え方をご紹介します。
従業員の意見を取り入れる
オフィスのレイアウトを決める際は、従業員の声を反映することが欠かせません。実際に働く人の意見を取り入れることで、作業効率や満足度が高まり、結果として生産性の向上にもつながります。
例えば「営業部とサポート部門を近くに配置して連携を強めたい」「会議室を増やして打ち合わせのしやすさを改善したい」といった要望は、現場ならではの気付きです。アンケートやヒアリングを通じて意見を集め、優先順位を付けながら反映すると実効性が高まります。
もちろん全員の要望を完全に満たすことは難しいですが、できる範囲で反映する姿勢を示すことでコミュニケーションが活性化し、従業員のモチベーション向上にもつながります。
スペース配分・ゾーニング計画を行う
50坪のオフィスを快適に活用するには、まず全体をどのように配分するかを考える必要があります。執務スペース、会議スペース、収納、そして人の移動を支える導線に分け、それぞれに適切な割合を割り当てることが大切です。
一般的には執務室が全体の半分以上を占め、残りを会議や収納に配分します。ただし社員の働き方や組織の性質によって適切なバランスは変わります。以下で詳しく見ていきましょう。
執務室
執務室は50坪オフィスの中心となるエリアで、全体の50〜60%を占めるのが一般的です。先述のように、1人当たりの面積は約2.5〜3坪前後が目安とされ、50坪では10~12名程度が快適に働ける規模と考えられます。ただしこの人数はあくまで目安であり、業務内容やレイアウトによって変動します。
家具や配置の工夫も大切で、可動式デスクや省スペースチェアを導入すれば、限られたスペースでも広さを感じられるでしょう。またフリーアドレス制を取り入れることで座席稼働率を高め、より多くの社員が効率的に利用できる環境作りも可能です。執務室の快適性を確保することが、生産性の向上に直結します。
会議室
会議室は全体の10〜20%を目安にスペースを割り当てるのが一般的です。50坪規模であれば、4〜6名用の小会議室と、8〜10名用の中会議室を1室ずつ設けるとバランスが取れます。
限られた面積を有効に使うために、執務スペースの一角を打ち合わせ用に兼用する工夫や、オープンな打ち合わせコーナーを設置するのも有効です。またWeb会議の増加を考慮すると、遮音性の高いブースや防音パネルの導入が求められます。
オープンスペースはカジュアルな交流に、クローズドな会議室は機密性の高い打ち合わせに使い分けると、効率的で柔軟な環境を作れます。将来的なリモート会議の拡大も視野に入れ、設備投資を計画することが望ましいでしょう。
導線
オフィスの快適性は、導線設計によって大きく左右されます。50坪の場合、全体の5〜10%を導線として確保するのが目安です。通路幅は最低600mmを取り、人がすれ違う可能性がある場所では1,200mm以上を確保することが望ましいとされています。
出入口から執務室、コピー機や休憩室といった利用頻度の高い箇所への移動をスムーズに設計することで、業務効率を高められます。また建築基準法や消防法に基づいた避難経路の確保も欠かせません。デスクや収納家具を配置する際には、通路をふさがず安全に移動できるかを必ず確認することが大切です。
シンプルで分かりやすい導線設計は日常業務の効率化だけではなく、災害時の安全確保にも直結します。
収納スペース
収納はつい後回しにされがちですが、快適なオフィス運営に欠かせない要素です。50坪規模では全体の5〜10%を収納に充てるのが理想的です。壁面や天井付近のデッドスペースを活用すれば、限られた面積でも効率よく物を収められます。
ペーパーレス化を進めることで、書類収納に必要な面積を減らすことも可能です。また収納付きデスクや多目的キャビネットを導入すれば、個人用品と業務用品を整理しやすくなります。
さらに耐震・耐火性を備えたキャビネットを選ぶと安心です。個人用ロッカーを設ければ社員が私物を管理しやすくなり、執務エリアの整理整頓にもつながります。限られたスペースでも工夫次第で快適な収納環境を実現できます。
休憩室
50坪のオフィスでは、限られた面積の中で休憩やリフレッシュのためのスペースをどう確保するかが課題になります。一般的には共用スペース(受付・休憩・リフレッシュ)に全体の10〜15%を配分するのが目安とされ、50坪規模でも小規模ながら休憩室を設けることは十分可能です。
スペースが限られる場合は、折り畳みテーブルや可動式の家具を用いて、必要に応じて打ち合わせや簡易会議に転用できるようにすると効率的になります。
またドリンクサーバー や自販機の配置では、匂いや音が執務エリアに影響しないよう配慮が必要です。さらに吸音材やパーティションで音を抑え、衛生的に利用できるよう清掃動線やゴミ置き場の位置も考慮しましょう。
避難経路をふさがない配置と運用ルールを整えることが、快適で安全な休憩室の実現につながります。
働き方に則したレイアウトを考える
オフィスのレイアウトには正解がなく、自社の働き方や業務特性に合わせた設計が重要です。例えば協働を重視する場合はオープンなスペースを広く取り、集中を重視する場合は静音性の高い個別席を配置するといったコンセプトの明確化が必要になります。
社員の声を反映させることで実務に即した改善が可能となり、アンケートやヒアリングを通じて要望を把握し、優先順位を整理することが効果的です。具体的には、部門間の近接配置、会議席の種類や数、リフレッシュ環境の必要性などが検討対象になります。
さらに、出社率やフリーアドレス導入の有無によって必要席数が変わるため、ハイブリッドワークに対応したWeb会議ブースや集中席を整備することも有効です。将来的な増員やレイアウト変更を見据え、可動家具や床配線を取り入れることで柔軟性を確保できます。
法律を守ったレイアウトにする
オフィスレイアウトを設計する際には、法令や基準を守ることが欠かせません。消防法では避難経路の確保や出入口・消火設備・感知器をふさがないことが求められ、パーティション設置時には手続きが必要になる場合もあります。
労働安全衛生法の観点からは、照明・換気・温湿度・騒音など作業環境を整えることが基本条件です。建築基準法では通路幅や出入口幅の規定があり、物件条件によって具体的な数値は異なります。
こうした法令は安全・健康・事業継続のための前提であり、遵守することで安心して働ける環境を確保できます。また非常用電源や避難経路のサインといったBCP(事業継続計画)の観点も重要です。
なお、数値や手続きの適用可否は建物や用途によって変わるため、必ず管轄窓口に確認することが大切です。
家具は寸法を測り適したものを選ぶ
限られた50坪のオフィスを有効活用するには、現場採寸を起点に家具を選ぶことが基本です。壁や柱、出入口、梁下の高さ、扉の開閉範囲を事前に測定し、それに基づいてデスクや収納を当て込むことで無駄のない配置ができます。
デスクはL字型や収納一体型、昇降式などを選び、省スペースかつ快適に作業できる環境を整えます。収納家具は縦方向の活用や壁付け、薄型・キャスター付きなど柔軟性のあるものが有効です。
さらに什器の色や素材を統一することで、視覚的に広く見せる効果も期待できます。将来の増席や島替えに備え、モジュール設計を意識した可動家具を導入するのも良い工夫です。
50坪のオフィスにおすすめなレイアウト例

オフィスには対向型(島型)やフリーアドレス型など、よく採用される配置があります。どの配置にも長所と短所があります。自社の業務や出社率、求めるコミュニケーション量に合わせて選ぶことが大切です。
以下で50坪におすすめのスタイルを紹介します。
対向型(島型)
対向型(島型)は複数のデスクを向かい合わせに並べ、グループ単位で「島」を作る配置です。内勤が多い職場や、チームでの連携を重視する業務に向いています。
資料の受け渡しや口頭での確認がしやすく、スペース効率も良好です。人員や組織変更にも比較的柔軟に対応できます。
一方で、視線や会話が気になりやすく、集中が途切れやすい点は課題です。個人スペースが狭いと感じやすいケースもあります。対策として、デスク間を適度に広げる、ローパネルで視線を和らげる、ノイズ対策を行うと効果的です。
打ち合わせが多いチームは、近くにクイックミーティング用の小スペースを設けると、島内の会話過多を抑えられます。一般的な什器で構成できるため、コスト面でも導入しやすいのが利点です。
フリーアドレス型
フリーアドレス型は固定席を設けず、必要最低限の座席数 で運用する配置です。外勤が多い部署や、出社率に合わせて席数を最適化したい職場に向いています。
席の稼働率を高めやすく、部署横断の着座で交流が生まれやすい点も魅力です。気分や業務内容に合わせた席選択ができるため、働き方の自由度も上がります。
課題は人気席の偏在や荷物管理です。個人ロッカーや貸与トレイの運用、私物の持ち込みルールが不可欠です。紙書類は極力電子化し、共有保管に統一します。
また席予約システムを活用すると、混雑の平準化に役立ちます。ABWとも相性が良く、集中ブースや電話ブース、プロジェクト用エリアを組み合わせると運用が安定します。コストは下がる場合もありますが、ルール設計やツール導入など管理工数も見込み、総合的に判断しましょう。
50坪のオフィスレイアウトの注意点
50坪は効率性と快適性の両立が求められる規模です。ここからは、レイアウトする際の注意点を紹介します。
圧迫感が出ないようにする
小規模~中規模オフィスでは、仕切りの高さや素材選びが空間印象を大きく左右します。圧迫感を避けるには、低めのパネルや透明・半透明素材を使い、必要箇所だけを囲う方法が有効です。
オープンレイアウトを基本にしつつ、視線や音が気になる場所だけポイントで仕切ると、開放感と機能性を両立できます。家具は奥行きが浅めのモデルや脚周りがすっきりしたタイプを選ぶと、広く感じます。
また明るい色調やガラス素材を取り入れる、天井と壁を明るく仕上げる、配光の良い照明を選ぶといった工夫で、視覚的な抜けが生まれるでしょう。電話・Web会議は吸音パネルやブースで音を抑え、周囲への干渉を軽減します。
用途に応じて仕切りを柔軟に取り入れ、遮音と視線対策をバランスよく設計しましょう。
音漏れに配慮する
50坪程度のオフィスでは、話し声や会議音が全体に響きやすく、集中力やプライバシーを損なう原因になります。対策としては、会議や打ち合わせのエリアを執務エリアから距離を取って配置したり、パーティションでゾーニングしたりする方法が有効です。
特に遮音性を高めたWeb会議ブースを導入すれば、集中環境の確保だけではなく、プライバシー保護や周囲への配慮の点でも効果があります。また天井や壁に吸音材を取り入れる、床をカーペットにする、ソフト素材の什器を選ぶといった工夫で残響を抑えることも可能です。
さらに複合機周辺や通路、受付付近など騒音が生じやすい場所は、執務席から離して配置すると安心です。完全な防音は建物条件に左右されますが、レイアウトや設備、利用ルールの工夫で音の干渉は大幅に軽減できます。
増員を視野に入れておく
オフィスは一度設計して終わりではなく、将来的な人員変動を見据えた柔軟性が重要です。可動式デスクやパーティション、標準化されたモジュール寸法を採用しておくと、増席や島替えに対応しやすくなります。
休憩やリフレッシュスペースを簡易会議室に転用できるよう設計すれば、短期的な増員にも柔軟に対応可能です。さらに、書類の電子化やペーパーレス化を進めて収納面積を削減することで、新しい席を確保できる余地も広がります。
またOAフロアや天井配線を活用すれば、席替えや拡張時の配線工事が最小限で済み、コスト削減にもつながります。増員対応を事前に計画しておくことで、大規模改修や移転に伴うリスクを回避できるため、長期的に見ても安心です。
まとめ
50坪のオフィスは、中小企業にとって「広過ぎず狭過ぎない」ちょうどよい規模ですが、快適で効率的な環境を作るには工夫が必要です。人数の目安やスペース配分、動線の確保、会議・休憩スペースの配置、音への配慮、そして将来の増員計画まで、複数の観点をバランスよく検討することが欠かせません。
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