オフィス移転に伴う総務の作業内容とは? 成功に導くポイントも解説
オフィス移転は、多くの部署や業者が関わる大規模なプロジェクトです。その中でも総務担当者は、全体のスケジュールを調整し、契約・工事・引っ越しなどあらゆる実務を統括する中心的な役割を担います。
しかし「何から手をつければよいのか」「どのタイミングでどのような手続きを行えばよいのか」といった不安を抱える方も少なくありません。
本記事では、オフィス移転を円滑に進めるために総務が行うべき作業について解説します。初めての移転を任された方も安心して進められるよう、具体的なポイントを分かりやすく紹介します。ぜひ参考になさってください。
目次
オフィス移転における総務の作業内容

オフィス移転では、旧オフィスに関する作業と新オフィスに関する作業の2つを行う必要があります。ここではそれぞれの作業を細かく分けて解説していきます。
旧オフィスに関する作業
旧オフィスで行う作業には、以下が含まれています。
- ・管理会社へ解約予告をする
- ・原状回復工事を手配する
- ・旧オフィスを引き渡す
まず、現オフィスの賃貸借契約書を確認し、解約予告の期限や原状回復の範囲などを把握します。その上で、管理会社や工事業者、社内各部署との調整を進め、スムーズな退去を目指します。
以下で一つずつ見ていきましょう。
管理会社へ解約予告をする
移転時期が決まったら、まず賃貸借契約書に基づき、管理会社または不動産会社へ解約予告を行います。一般的には退去日の6カ月前が目安とされていますが、契約内容によって異なる場合があるため、必ず確認が必要です。
民法第540条第2項では、一度行った解約の意思表示は原則として撤回できません。そのため、原状回復工事や引き渡し準備にかかる期間を見越して、現実的なスケジュールを立てることが大切です。
解約予告時には、以下のような項目も併せて確認しておくと安心です。
- ・敷金・保証金の返還条件と時期
- ・解約後の支払い方法
- ・引き渡し日および立ち会い日程
- ・退去時の内覧の有無
また解約のやり取りは口頭だけではなく、書面やメールなど記録が残る方法で行うのが基本です。予告が遅れると余分な賃料が発生する恐れがあるため、早めの対応を心がけましょう。
原状回復工事を手配する
居抜き物件でない限り、退去時には原状回復工事が必要になります。原状回復とは、入居前の状態に戻すことを指し、契約内容に基づいて範囲が決まります。多くの場合、床・壁・照明・配線・間仕切りなどの修復が必要です。
工事は退去日までに完了させることが条件とされており、作業に1カ月以上かかる場合も珍しくありません。スケジュールに余裕がないと、退去日に間に合わず追加賃料や違約金が発生するリスクもあります。
管理会社によっては指定業者を定めていることもあるため、必ず事前に確認しておきましょう。指定がない場合は、複数の工事業者から見積もりを取り、費用・期間・実績を比較検討します。また照明や床材など再利用できる箇所を見極めることで、コスト削減にもつながります。
原状回復工事の手配は、荷物の撤去と並行して早めに進めることが肝心です。業者との調整を密に行い、退去日に確実に完了できるよう計画を立てましょう。
旧オフィスを引き渡す
原状回復工事が完了したら、管理会社に連絡を入れ、引き渡しの立ち会い日程を調整します。立ち会い当日は、管理会社の担当者とともにオフィス内を確認し、内装や設備に不備がないかを細かくチェックします。壁や床、照明、コンセントなどの修繕状態を一つずつ確認し、問題がなければ「引き渡し完了」となります。
この際、鍵や入館証、セキュリティカードの返却も忘れずに行いましょう。さらに、電気・水道・通信などのライフライン契約の解約や名義変更を同時に進めることで、余分な費用の発生を防げます。
立ち会い時に修繕の不備が見つかる場合もあるため、事前に社内で最終チェックを済ませておくと安心です。引き渡し後は、書面で「引き渡し確認書」を受け取り、記録として保管しておきましょう。これで旧オフィスに関する総務の作業は全て完了となります。無事に引き渡しが済めば、次は新オフィスの準備に集中できます。
新オフィスに関する作業
新オフィスでは、以下のように多岐にわたる業務を並行して進める必要があります。
- ・レイアウト作成・内装工事の手配をする
- ・OA機器・家具の選定・発注をする
- ・引っ越し業者の選定・手配をする
- ・通信・セキュリティ・電気工事の手配をする
- ・社内マニュアルの作成・従業員への周知をする
- ・各種手続き・届け出をする
旧オフィスの退去準備と同時進行となるため、スケジュール管理を徹底することが欠かせません。ここからは、新オフィスづくりの具体的なステップを順に見ていきましょう。
レイアウト作成・内装工事の手配をする
新オフィスの計画では、まず「ゾーニング」を意識したレイアウト設計が重要です。ゾーニングとは、執務エリア・会議室・休憩スペースなど、空間の用途ごとに配置を考える設計手法を指します。動線を意識して設計することで、社員の移動効率やコミュニケーションのしやすさが大きく変わります。
レイアウトは、移転理由に応じて柔軟に設計します。例えば「増員対応」なら拡張性のある配置「コンパクト化」なら省スペースを意識した配置が効果的です。またフリーアドレス席やWeb会議ブース、集中ブースなど、現代的な働き方に合わせた空間構成も検討しましょう。
内装工事を依頼する際は、管理会社が指定する施工業者の有無を確認します。指定がない場合は、複数の業者から見積もりを取り、費用・対応範囲・納期を比較検討することが大切です。
工事は数日〜数週間かかることもあるため、総務が立ち会って進捗を確認し、仕上がりをチェックします。照明・配線・防音・空調なども同時に整備しておくと、移転後のトラブルを防げます。
OA機器・家具の選定・発注をする
レイアウトが固まったら、OA機器や家具の選定・発注に移ります。旧オフィスで使用していた備品のうち、再利用できるものを確認した上で、新規購入またはリース契約を検討します。コストだけではなく、耐久性やデザイン、機能性も考慮して選定することが大切です。
発注時は、各業者から見積もりを取り、納期を踏まえて早めに注文を確定します。納品時期が工事や引っ越しと重なると混乱が生じやすいため、スケジュールの調整も欠かせません。不用品が出る場合は、リスト化して不用品回収業者へ依頼しておくとスムーズです。
またコピー機や電話機など、リース契約品は契約変更や設置先住所の届け出が必要になるため、契約内容を確認しましょう。在宅勤務者がいる場合は、在宅用のモニターやチェアの導入も検討するとよいでしょう。備品の準備が整えば、引っ越しの手配へと進みます。
引っ越し業者の選定・手配をする
引っ越し業者を選ぶ際は、複数の業者に相見積もりを取り、費用だけではなく対応範囲やサービス内容を比較します。特に、オフィス移転では機密書類や高額なOA機器を扱うため、信頼性を重視することが欠かせません。
判断基準の一つとして「引越安心マーク」(全日本トラック協会の認定制度)を取得しているかを確認するとよいでしょう。大規模な移転では不用品の処分やレイアウト変更の補助など、付帯サービスを提供する業者もあります。これらの対応可否も選定ポイントです。
発注の目安は移転予定日の5カ月前が理想です。繁忙期(3〜4月)は予約が取りにくいため、早めの手配を心がけましょう。
また搬入経路やビルの使用制限、エレベーターの使用時間などを事前に確認し、ビル管理会社との調整も忘れずに行います。信頼できる業者を選ぶことで、移転当日の混乱を防ぎ、スムーズな立ち上げを実現できます。
通信・セキュリティ・電気工事の手配をする
新オフィスでは、インフラ環境の整備が事業再開の要となります。移転後に電話やインターネットが使えない、電源が足りないといった事態を防ぐためにも、通信・電気・セキュリティ工事の準備は最優先で進めましょう。
まず、電気・ガス・水道などのライフラインは、移転日が決まり次第、契約中の事業者や水道局へ早めに連絡を行います。通信インフラについては、ビルごとに指定事業者が定められている場合もあるため、契約前に必ず確認が必要です。電話やネットワーク回線の開通工事には時間がかかることが多く、繁忙期には数週間待ちになることもあります。
またオフィスのレイアウトに合わせてLAN配線や電気配線を設計し、必要に応じてVPN(仮想専用線)などの安全なネットワーク環境を構築します。さらに、入退室管理システムや防犯カメラ、UPS(無停電電源装置)などを導入することで、セキュリティ面を強化できます。
配線や設置工事は数日にわたる場合もあるため、立ち会い日程や進行状況の管理を徹底しましょう。新オフィス稼働初日は、通信・電気・セキュリティ関連業者にも立ち会ってもらうことで、トラブル発生時に迅速な対応が可能になります。
社内マニュアルの作成・従業員への周知をする
移転準備の最終段階では、社内マニュアルを整備し、全社員に向けた周知を徹底することが欠かせません。マニュアルには、移転の目的や新オフィスの概要、各部署の役割分担、問い合わせ窓口、スケジュールなどを明記します。これにより、社員が移転の流れを把握しやすくなり、混乱や問い合わせの集中を防ぐことができます。
情報共有の期間は、少なくとも2カ月以上確保するのが理想です。説明会を開いたり、全社メールや社内ポータルを活用したりして、全員が理解できる形で伝えましょう。新しいレイアウトや設備に慣れてもらうために、オリエンテーションを実施するのも効果的です。
また総務や人事部では、従業員の通勤経路を確認し、交通費の更新を早めに行う必要があります。さらに、消防法に基づく避難経路・消火設備・警報装置などの周知も重要です。初日には、ビルの設備マップを座席表と併せて共有すると、緊急時の対応がスムーズになります。
FAQ形式の社内資料を作成したり、入館手順や設備利用方法を動画で共有したりすることで、社員が安心して新環境に馴染める体制を整えましょう。
各種手続き・届け出をする
オフィス移転では、行政機関や取引先への届け出を適切なタイミングで行うことが重要です。まず、電気・ガス・水道の移転手続きに加え、郵便局への転送届を早めに提出しておきましょう。これにより、重要書類や請求書が旧住所に届くトラブルを防げます。
消防署への届け出も忘れてはなりません。新オフィスを使用開始する7日前までに「防火対象物使用開始届出書」を提出し、内装工事を行う場合は工事開始の7日前までに「防火対象物等工事計画届出書」を提出します。また警察署には「自動車保管場所証明申請書」や「安全運転管理者変更届」の提出が必要です。
さらに、取引先や顧客への移転案内は2〜3カ月前までに送付するのが理想です。併せて、自社のWebサイトやSNSの所在地情報も更新しておきましょう。名刺・封筒・社印など住所を印字した備品も移転初日に間に合うよう準備します。
銀行やクレジットカード会社の登録変更も早めに対応し、請求や引き落としの混乱を防止します。休業期間を設ける場合は、顧客や取引先に配慮し、事前に告知しておくことが信頼維持につながります。手続きの漏れを防ぐため、チェックリストを作成して順に確認するのが効果的です。
総務の作業を成功させるためのポイント

オフィス移転は数カ月から半年以上にわたる長期プロジェクトであり、計画性とチームワークが成功の鍵を握ります。総務は全体の進行管理を担う立場として、スケジュール・予算・関係部署との連携を徹底する必要があります。
一つの工程の遅れが全体に波及することもあるため、各タスクの進行状況を常に把握し、柔軟に調整できる体制を整えることが大切です。ここからは、総務担当者が移転作業を円滑に進めるための具体的なポイントを紹介します。
スケジュールを厳守する
オフィス移転の成功において、最も重要なのがスケジュール管理です。移転計画が正式に決定したら、まず全体スケジュールを作成し、各工程の実施期間を明確にします。原状回復や内装工事、通信工事、引っ越しなど、タスクごとに担当者と期限を設定しておくことが不可欠です。
計画を立てる際は、旧オフィスの解約時期を起点に逆算して日程を組み立てます。退去日の6カ月前が解約通知の目安とされるため、それを基準に原状回復工事や新オフィス準備のスケジュールを調整しましょう。各工程には予想以上の時間がかかることもあるため、余裕を持った計画が望まれます。
特に原状回復工事は退去日までに完了していることが条件となるため、工期を正確に見積もることが重要です。また外部業者の繁忙期(3〜4月)は予約が取りづらいため、早期に依頼することがトラブル防止につながります。
進捗状況は、ガントチャートや共有ツールを用いて可視化し、全員で確認できるようにしておくと効果的です。小さな遅れを放置せず、早めに対処することが、スムーズな移転成功の第一歩となります。
作業リストを作成し進捗を確認する
オフィス移転は多くのタスクが並行して進むため、総務担当者が中心となって業務を可視化することが欠かせません。まずは、総務が担当する全ての作業を洗い出し、チェックリスト形式で一覧化します。項目は実施スケジュールの順に整理し、所要時間・期限・担当者名(外部業者を含む)を明記しておくと管理が容易になります。
リストを作成したら、定期的に進捗を更新し、チーム全体で共有する体制を整えましょう。進行状況を「完了」「作業中」「保留」などのステータスで可視化することで、遅延やミスを早期に発見できます。タスクの重複やヌケモレを防ぎ、全体スケジュールの把握にも役立ちます。
進捗共有には、ExcelやGoogleスプレッドシートなどの共同編集ツールを活用すると便利です。また定例ミーティングを設けて現状報告や課題共有を行うと、チーム間の連携がよりスムーズになります。全員が状況を把握し、問題が発生した際に迅速に軌道修正できる仕組みを整えることが、移転プロジェクトを成功へ導くポイントです。
外注先の選定・手配は早めに行う
オフィス移転は短期間で多くの工程をこなす必要があり、外注先の選定・手配を早めに進めることが成功の鍵となります。移転初期の段階から、工事会社、引っ越し業者、OA機器業者、不用品回収業者などの候補をリストアップし、スケジュールに合わせて商談を開始しましょう。
各業者には相見積もりを依頼し、費用・対応範囲・サポート体制・信頼性を比較検討します。契約や発注の準備には想定以上の時間がかかるため、商談や契約書確認の期間も十分に確保することが大切です。繁忙期(3〜4月)は予約が取りづらく、費用も高くなる傾向があるため、早めの問い合わせが望まれます。
外注先ごとにタスク一覧を作成して進捗を管理しておくと、複数業者とのやり取りも整理しやすくなります。スケジュール全体を俯瞰し、どの工程でどの業者が関わるかを明確にしておくことで、業務の重複や抜け漏れを防止できます。早期の準備が、移転全体のリスクを最小限に抑えるポイントです。
オフィス移転の専門業者に相談する
総務担当者は通常業務をこなしながら移転準備を進めるため、業務負担が大きくなりがちです。そこで、オフィス移転の専門業者に相談・委託することで、作業効率を大幅に向上させることができます。
専門業者に依頼すれば、レイアウト設計、内装工事、通信・電気工事、引っ越しなど、複数の業者を一括で管理してもらえるのが大きなメリットです。経験豊富な業者は、過去の実績を基に最適な工程設計やコスト削減策を提案してくれることもあります。また専門的な知識を活用することで、トラブルを事前に防ぎ、移転後の業務再開もスムーズに行えます。
パートナー選定の際は、対応範囲、実績、サポート体制、担当者の対応品質を確認することが重要です。さらに、複数の提案を比較し、自社の業務内容やスケジュールに合った業者を選ぶことで、移転プロジェクト全体の成功率を高められます。プロの知見を取り入れることは、総務担当者の負担軽減だけではなく、移転の質を向上させる有効な手段です。
まとめ
オフィス移転における総務の業務は、旧オフィスの解約・原状回復から新オフィスのレイアウト設計、各種届出、社内周知まで多岐にわたります。特にスケジュール管理と進捗の可視化、そして外部業者との連携が、プロジェクトを円滑に進める上で欠かせない要素です。
移転は企業にとって大きな節目であり、準備の質がその後の業務効率や社員満足度を左右します。計画的にタスクを整理し、早期に手配・共有を行うことで、想定外のトラブルを未然に防げます。
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