オフィス移転の段取りを徹底解説! 期日ごとのやるべきことや行政手続きも紹介
オフィス移転は、企業の成長や働き方の変化に合わせて行われる大きなプロジェクトです。しかし「どのように段取りを組めばよいのか」「どのような手続きが必要なのか」と悩む担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、オフィス移転の全体スケジュールから、期間ごとの段取り、必要な行政手続きまでを詳しく解説します。円滑なオフィス移転を実現するために、ぜひ参考になさってください。
目次
- オフィス移転の全体的なスケジュール
- 【オフィス移転6カ月前までの段取り】目的の明確化と解約準備
- 移転目的の明確化
- 予算策定とチーム編成
- 旧オフィスへの解約予告
- 原状回復の条件確認
- 【オフィス移転3~4カ月前の段取り】物件選定と設計の開始
- 物件選定・契約
- レイアウト計画・設計
- 業者選定
- 【オフィス移転1~3カ月前の段取り】最終準備と周知
- レイアウトの確定と発注
- インフラ手配
- 社内外への周知
- 施主検査
- 【オフィス移転当日の段取り】実行と確認
- 引っ越し作業の実施
- 責任者の配置
- 最終チェック
- 旧オフィス退去立ち会い
- 【オフィス移転後の段取り】アフターフォローと残務処理
- アフターフォロー
- 原状回復工事の完了
- 残務処理
- オフィス移転の行政手続きの段取り
- まとめ
オフィス移転の全体的なスケジュール
オフィス移転にかかる期間は、規模や目的によって異なりますが、一般的には6カ月前までに準備を終わらせるのが理想です。特に、旧オフィスの解約通知は6カ月前に行うケースが多く、そこから逆算して準備を進めることが大切です。
- ・6カ月前まで:移転方針・予算・物件選定
- ・3~4カ月前まで:設計・内装工事・引っ越し業者の手配
- ・1~3カ月前:引っ越し・各種手続き
- ・移転後:アフターフォロー・残務処理
これらは並行して進む工程も多く、担当者の徹底した進行管理が求められます。スケジュールを「可視化」することで、関係部署との連携やタスク管理がスムーズになります。
【オフィス移転6カ月前までの段取り】目的の明確化と解約準備
オフィス移転の成功は、早い段階での方向性づくりにかかっています。6カ月前までに「なぜ移転するのか」「どのような環境を目指すのか」を明確にし、現オフィスの契約内容を確認して解約手続きを準備します。
ここで方向性が曖昧なまま進めると、後の物件選定やレイアウト設計にズレが生じるため、最初の整理が肝心です。以下で詳しく見ていきましょう。
移転目的の明確化
オフィス移転を進める上で、まず重要なのが「なぜ移転するのか」という目的を明確にすることです。例えば、業務拡大に伴うスペース確保、採用力の向上、社員の働き方改革、老朽化や立地課題の改善などが挙げられます。
目的を経営戦略や人事戦略と結びつけることで、移転の意義が社内全体に共有され、判断軸がぶれにくくなります。また社員アンケートや現場ヒアリングを行い、現オフィスの課題を「データ」として把握しておくと、改善点が明確になります。
複数の目的を掲げる場合は優先順位を決め、最も重視する成果を基準に計画を立てることが重要です。曖昧な動機ではなく、具体的なゴールを設定することで、後の意思決定がスムーズになります。
予算策定とチーム編成
オフィス移転は多くの部署が関わる大規模プロジェクトです。そのため、早い段階で横断的なチーム体制を整え、予算の見通しを立てることが欠かせません。
主な費用には、内装工事費・引っ越し費・通信インフラ整備・什器購入・原状回復費用などがあります。これらを基に、複数の見積もりを比較して概算予算を作成しましょう。
またチームは総務・人事・経理・IT・広報などの担当者で構成し、責任者を明確にすることが大切です。プロジェクト管理ツールを活用すれば、進捗の共有やタスクの見える化がしやすくなります。
さらに、設計会社や不動産仲介業者、引っ越し会社などの外部パートナーとの連携体制も、この時期から構築しておくと安心です。誰が何を担当するのかを明確にしておくことで、後のトラブルを防げます。
旧オフィスへの解約予告
旧オフィスを退去する際は、まず賃貸契約書の「解約予告期間」を確認しましょう。
多くの契約では6カ月前の通知が必要と定められており、期日を過ぎると次の契約期間に自動更新される場合もあります。
通知は「解約通知書」を書面で作成し、オーナーまたは管理会社へ提出します。提出方法は郵送(書留)やメール添付などが一般的で、送付記録を必ず残すことが大切です。
また契約内容によっては違約金や保証金の返還条件が異なる場合もあります。原状回復や引っ越しスケジュールとも関わるため、解約予告は移転計画の最初期に行うことが理想的です。
原状回復の条件確認
退去時には「原状回復工事」を行う義務があります。解約の申し出と同時に、工事の範囲・内容・スケジュールを確認しましょう。契約書で定める「原状」とは必ずしも入居時点の状態ではないため、曖昧な点は早めに管理会社へ相談しておくと安心です。
またオーナーが指定する業者を利用しなければならない場合もあり、費用の見積もり取得は早めに進めるのが望ましいです。照明や床材、パーティション撤去など、範囲の認識違いによるトラブルも少なくありません。
さらに、原状回復工事が新オフィスの工事時期と重ならないよう、スケジュールの調整も重要なポイントです。
【オフィス移転3~4カ月前の段取り】物件選定と設計の開始
3〜4カ月前は、新オフィス計画の具体化が始まる重要な時期です。この段階では、候補物件の比較検討を本格化させるとともに、レイアウトや設備構成といった基本設計の方針を固める段階に入ります。
以下で一つずつ解説します。
物件選定・契約
新オフィスの物件を選ぶ際は、立地・賃料・面積・耐震性・設備などの条件を総合的に比較します。特に、電源容量や空調能力、通信環境といったインフラ条件は後から変更が難しいため、早い段階で確認が必要です。
内見は1回ではなく複数回行い、採光・動線・周辺環境(交通・飲食店・金融機関など)も確認します。契約時は保証金・更新料・共益費・契約期間などの条件を明確に把握し、将来の人員増加やレイアウト変更にも対応できるかを検討しましょう。
安易に賃料の安さだけで決めると、後にコストや利便性の面で後悔するケースもあります。見た目だけではなく、設備・立地・契約条件をバランス良く評価することが大切です。
レイアウト計画・設計
レイアウト設計は、移転の目的を実現するための重要な工程です。「業務効率化」「コミュニケーション促進」「社員満足度の向上」など、目的に沿ったコンセプト設計を行いましょう。
デスクや会議室、休憩スペース、収納などをバランス良く配置し、動線や視線の抜けにも配慮します。またLANや電源、Wi-Fi、サーバールームといったIT・通信インフラの設計は、専門業者と連携して早めに進めることが重要です。
さらに、近年はABW(Activity Based Working)やフリーアドレスの導入で柔軟な働き方を実現する企業も増えています。デザイン性だけではなく、実務面・コスト・施工期間との整合を意識した現実的な設計を目指しましょう。
業者選定
オフィス移転には、内装工事・引っ越し・原状回復など、複数の専門業者が関わります。
まずは分野ごとに依頼候補をリストアップし、複数社から見積もりを取得して比較検討することが重要です。
比較の際は、費用だけではなく実績・対応品質・スケジュール管理能力も確認しましょう。内装工事と通信設備、原状回復が同時期に進行するため、工程の重なりを見越したスケジュール調整も欠かせません。
また同一業者が内装と原状回復の両方を請け負える場合もあるため、業務を一本化できると手間を削減できます。契約前にはキャンセル規定や追加費用条件を明確にし、トラブル防止に努めましょう。
【オフィス移転1~3カ月前の段取り】最終準備と周知
移転1〜3カ月前は、これまで計画してきた内容を具体的に形にする最終フェーズです。この段階で「確認漏れ」や「納期遅延」が発生すると、移転当日に影響が出るため注意しましょう。
以下で詳しく解説していきます。
レイアウトの確定と発注
移転直前の3カ月前には、レイアウト設計を最終確定し、家具や什器の発注を行います。座席配置や動線、収納位置などを業者と綿密にすり合わせ、内装との整合性を必ず確認しましょう。
デスクやチェアの選定では、チーム制やフリーアドレスなど、自社の働き方に合った設計が大切です。また照明や電源位置、配線ルートなども施工段階で調整できるよう、設計図面を基に打ち合わせを重ねます。
家具の納期は平均1〜2カ月ほどかかる場合があるため、特注品は早めの手配が必須です。おしゃれさだけに偏らず、業務効率・快適性・耐久性のバランスを重視して選びましょう。
インフラ手配
電話回線やインターネット回線など、通信インフラの整備はオフィス移転で特に重要な工程です。新設・移設の工事は、内装工事の進行や床配線設計と密接に関わるため、早めの調整が不可欠です。
IT担当部門やベンダーと連携し、開通日・機器搬入日を確定させておきましょう。またネットワーク構築やWi-Fi設定、セキュリティ対策もこの時期に見直すと安心です。
プロバイダの契約変更や工事費用は想定より時間とコストがかかる場合があるため、余裕をもったスケジュール設計が必要です。工事遅延が業務開始に影響しないよう、全体の進行管理を徹底しましょう。
社内外への周知
オフィス移転が目前に迫った段階では、社内外への情報共有を丁寧に行うことが大切です。
まず、法務局・税務署・年金事務所など官公庁への住所変更届を準備し、移転日と併せて提出します。
社外向けには、取引先や顧客に対して移転案内文を作成し、送付スケジュールを明確にしておきましょう。名刺・封筒・会社案内・Webサイトなどの住所更新も早めに対応します。
社内では、移転マニュアルを共有し、説明会を開いて不安や疑問を解消します。また内線番号やメール署名の変更も忘れずに行いましょう。
施主検査
内装工事が完了したら、引き渡し前に施主検査(引き渡し検査)を実施します。これは、発注者が工事内容を最終確認する大切な工程で、壁や床、ドア、什器などに傷・汚れ・歪みがないかを細かくチェックします。
また図面通りに仕上がっているか、照明・コンセントの位置や素材、色味まで仕様を照合しましょう。不具合を見つけた場合は、工事業者に修正を依頼し、修正完了後の再確認も行います。
引き渡し後の修正は追加費用になるケースも多いため、この段階でしっかり確認することが重要です。写真で記録を残したり、工事監理者やデザイナーの立ち会いを依頼したりすると安心です。
【オフィス移転当日の段取り】実行と確認

移転当日は、これまでの計画を実行に移す日です。あらかじめ作成したスケジュールとマニュアルに沿って、複数チームが同時進行で作業を行います。次で具体的に見ていきましょう。
引っ越し作業の実施
引っ越し当日は、事前に作成した工程表を基に、業者と綿密に連携しながら搬出・搬入を進めます。荷物や機材はチーム単位でラベル管理し、どこに何を運ぶかを明確にして紛失を防ぎます。
搬出順やエレベーターの使用時間などはビル管理会社と調整し、動線を確保して作業の停滞を防ぎましょう。パソコンや電話などの通信機器は、現場で接続確認を行いながら設置を進めます。
重要書類や貴重品は専任担当者が責任をもって管理・運搬することが鉄則です。また搬入後すぐにネットワークや電源を稼働できるよう準備しておくと、翌営業日からスムーズに業務を再開できます。
責任者の配置
移転当日の混乱を防ぐためには、現場での統率体制が欠かせません。旧オフィスと新オフィスの双方に責任者を配置し、トラブル発生時に迅速な判断ができるようにしておきます。
荷物破損や工事遅延、電気トラブルなど、想定外の事態が起きた場合でも、責任者がその場で判断できる体制を整えることが重要です。また総務だけではなく、IT・設備・人事など分野別リーダーを置くと、各現場の動きがスムーズになります。
作業の進行状況は共有ツールや口頭連絡で随時確認し、チーム間の連携を保ちましょう。誰が何を判断するかを明確にしておくことで、全体の動きが止まらず、混乱を防げます。
最終チェック
全ての荷物搬入が完了したら、最終チェックを行いましょう。電気・照明・空調・水道・インターネットなど、インフラ設備の動作確認を最優先に実施します。
次に、机・椅子・複合機などの大型什器が図面通りに配置されているかを確認し、破損や紛失がないかを運送業者の立ち会いのもとでチェックします。清掃状況や配線の安全性、段差の有無などもこの時点で点検しておくことが大切です。
チェックリスト形式で進めると漏れを防げる上、写真を残しておくとトラブル対応がスムーズです。業者が現場を離れる前に確認を終え「業務を再開できる状態」を確実に整えるようにしましょう。
旧オフィス退去立ち会い
旧オフィスを退去する際は、ビル管理会社やオーナー立ち会いのもとで最終確認を行います。
当日は、原状回復工事の仕上がりを確認し、壁・床・設備に損傷がないかをチェックします。また鍵・入退室カード・駐車証などの返却もこの場で実施します。
不備や清掃不足がある場合は、その場で修繕方法や費用負担を協議し、書面で合意を取ることが重要です。電気・空調・水回りなどの動作確認も同時に行い、写真で現況を記録しておくと後日のトラブルを防げます。
【オフィス移転後の段取り】アフターフォローと残務処理
オフィス移転は、引っ越しが終わった時点で完了ではありません。新オフィスでは不具合の確認や従業員サポートが必要となり、旧オフィスでは原状回復・残務処理などが残ります。
以下でそれぞれを整理して紹介します。
アフターフォロー
新オフィスの運用が始まったら、まず設備や通信環境の動作確認を行いましょう。ネットワークや空調、照明などの不具合があれば、業者と連携して早急に修正します。
同時に、従業員の使用感や要望をヒアリングし、働きやすさを高める改善を続けることが大切です。アンケートやミーティングを活用して現場の声を吸い上げると、定着がスムーズになります。
また設備マニュアルや利用ルールを再共有し、新しい環境に慣れるまでのサポート体制を整えましょう。一度の確認で終わらせず、継続的なフォローを行うことで、安心して業務を再開できます。
原状回復工事の完了
旧オフィスでは、契約時の状態に戻すための原状回復工事を実施します。壁・床・照明・設備などを修繕・撤去し、オーナーや管理会社の立ち会いのもとで完了確認を行いましょう。
確認時に不備があれば補修対応を行い、完了後に報告書を提出します。この際、写真付きの報告書を残しておくと、後日のトラブル防止に役立ちます。
鍵や入退室カードの返却、電気・水道・通信の契約解除手続きも同時に行い、正式な引き渡しを完了させます。原状回復費用はトラブルになりやすいため、契約内容に基づいて慎重に確認することが大切です。
残務処理
移転が完了しても、まだいくつかの事務手続きや契約関連のタスクが残っています。旧オフィスに残された不要物や廃棄物を整理・処分し、郵便物の転送設定を確認しましょう。
また各種契約や支払い情報の更新、移転費用の最終精算・請求書処理も行います。業者との契約終了や支払いスケジュールも確認し、未処理がないかをチェックします。
移転プロジェクト全体の報告書をまとめ、今後の改善点を共有すると次回の計画に生かせます。残務処理は「後始末」ではなく、プロジェクト完了の最終工程です。全体を整理して引き継ぐことで、新オフィスでの業務が安定します。
オフィス移転の行政手続きの段取り
オフィス移転に伴っては、複数の行政機関への届け出が必要です。代表的な手続きとして、法務局での本店所在地変更登記、税務署への異動届、年金事務所やハローワークへの住所変更届などが挙げられます。
それぞれ提出先や期限、必要書類が異なるため、一覧表にして進行管理すると漏れを防げます。また郵便局への転送届、防火対象物使用開始届、電気・水道などの契約変更手続きも忘れずに行いましょう。
近年はオンライン申請が可能な手続きも増えており、電子申請を活用すれば効率的に進められます。法人形態や地域によって手続き内容が異なるため、自社に合った方法で早めに準備を進めることが大切です。
まとめ
オフィス移転では「計画」「準備」「当日」「移転後」の4つのフェーズを意識して進めることが成功の鍵です。各段階でスケジュールを明確にし、関係者間の連携や行政手続きを確実に行うことで、無理のない移行が実現します。
また移転完了後もアフターフォローを継続し、設備や運用体制を安定させることが大切です。オフィス移転は単なる引っ越しではなく、企業の成長や働き方を見直す機会でもあります。
株式会社ブレインズ・ネットワークが運営する「事務所移転.com」では、レイアウトから原状回復、引っ越し、什器の運び込みなど、オフィス移転に必要な段取りを一括で対応いたします。移転の流れや費用相場、施工事例などはこちらで詳しく紹介しています。スムーズなオフィス移転を目指す際は、ぜひ参考になさってください。
