オフィス移転に使える補助金・助成金6選! 申請時の注意点やフローも解説
オフィス移転を検討する際、多くの企業が最初に直面するのが費用面の不安です。物件取得費や内装工事費、引っ越し費用などが重なり、数百万円単位の初期コストが発生するケースも珍しくありません。
総務担当者として移転を任されたものの「どこまで費用がかかるのか」「本当に今、移転すべきなのか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、オフィス移転で使える制度6選をはじめ、補助金と助成金の違い、申請時に押さえるべき重要ルール、受給までの基本フローを整理します。何から調べればよいか分からない方も、ぜひ参考になさってください。
目次
- オフィス移転で活用できる補助金・助成金とは?
- 補助金と助成金の違い
- オフィス移転に使える主な補助金・助成金6選
- ITツールの導入費用を軽減する「IT導入補助金」
- 設備投資による生産性向上を目指す「ものづくり補助金」
- 販路開拓や業務効率化を支援する「小規模事業者持続化補助金」
- 新分野展開や業態転換に伴う移転に「事業再構築補助金」
- M&Aや事業承継を機とした移転に「事業承継・引継ぎ補助金」
- 従業員の処遇改善や正社員化を促す「キャリアアップ助成金」
- オフィス移転時に補助金・助成金を申請する際の3つの注意点
- 1.費用は「原則後払い」であり事前資金の確保が必須
- 2.受給した資金は法人税や所得税の「課税対象」となる
- 3.申請書類の作成や実績報告の手間・事務負担が大きい
- オフィス移転で補助金・助成金を受給するまでの基本フロー
- ステップ1.自社に適合する制度の選定と公募要領の確認
- ステップ2.事業計画書など必要書類の作成と交付申請
- ステップ3.採択(交付決定)を受けた後に移転事業を実施
- ステップ4.実績報告書の提出と助成資金の受領
- まとめ
オフィス移転で活用できる補助金・助成金とは?
オフィス移転には、物件取得費や内装工事費、引っ越し費用など多額の初期費用が伴います。こうした負担を軽減するために、国や自治体は中小企業向けに補助金・助成金制度を設けています。
これらの制度は、単に移転すること自体を支援するものではありません。事業の成長や生産性向上、雇用環境の改善といった政策目的と結びつくことで、移転関連費用の一部が対象になる仕組みです。そのため、制度内容を正しく理解し、事前に情報収集を行うことが重要でしょう。
また国の制度だけではなく、自治体独自の支援策が用意されている場合もあります。知らなければ使えない制度が多いため、移転計画の初期段階から調べておく姿勢が欠かせません。
補助金と助成金の違い
補助金と助成金は似た言葉として使われがちですが、制度の目的や仕組みには明確な違いがあります。
補助金は、主に経済産業省系の制度が中心で、事業成長や設備投資、生産性向上を後押しすることが目的です。支給額が比較的大きい反面、予算枠が決まっており、審査を経て採択された事業者のみが受給できます。そのため、申請すれば必ず受け取れるものではありません。
一方、助成金は厚生労働省管轄の制度が多く、雇用の安定や労働環境の改善を目的としています。一定の要件を満たしていれば受給できる可能性が高い点が特徴です。オフィス移転では、人事制度の見直しや職場環境改善と結びつく場合に助成金が関係するケースもあります。
なお、両者に共通する点として、原則後払いであることや、証憑書類の管理が重要である点が挙げられます。制度の違いを理解した上で、自社に合った方向性を検討することが大切でしょう。
オフィス移転に使える主な補助金・助成金6選

オフィス移転では、物理的な引っ越しだけではなく、IT導入や設備投資、業務効率化の取り組みが同時に発生しやすくなります。こうした動きに合わせて活用できる補助金・助成金制度は一つではありません。目的や投資内容ごとに複数の制度が用意されており、自社の状況に合うものを選ぶことで、移転に伴う負担を抑えやすくなります。
ここからは、全国の企業が申請可能な代表的制度を6つ紹介します。
ITツールの導入費用を軽減する「IT導入補助金」
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者の業務効率化やDX推進を支援する制度です。オフィス移転を機に業務フローを見直し、IT環境を刷新したい企業にとって、活用しやすい補助金といえるでしょう。
補助対象となるのは、クラウドサービスや業務管理システム、会計・勤怠管理ツール、セキュリティソフトなどです。
テレワーク対応や情報セキュリティ強化、バックオフィス業務の効率化といった取り組みとも相性があります。
一方で、什器や内装工事といったハード面は対象外となりやすく、あくまでソフト面の投資支援が中心です。また、事前に登録されたITツールやIT導入支援事業者との連携が前提となる点にも注意が必要でしょう。年度ごとに要件が変わる可能性があるため、最新情報の確認が欠かせません。
設備投資による生産性向上を目指す「ものづくり補助金」
ものづくり補助金は、革新的なサービス開発や生産プロセスの改善を目的とした中長期的な投資支援制度です。
オフィス移転に伴い、高額な設備投資や業務システム構築を行う企業に適しています。対象となり得るのは、機械装置の導入や専用設備、業務システムの構築などです。
製造業に限らず、サービス業やIT系企業でも活用事例があり、移転を単なる場所変更ではなく、事業成長の投資機会と捉える視点が求められます。
ただし、移転費用そのものが補助される制度ではありません。あくまで事業目的に紐づく設備や投資が対象です。申請には事業計画書の作成や審査があり、採択制である点も踏まえ、余裕を持った準備が必要でしょう。
販路開拓や業務効率化を支援する「小規模事業者持続化補助金」
小規模事業者持続化補助金は、従業員数の少ない事業者を主な対象とし、販路開拓や業務効率化といった新たな取り組みを支援する制度です。商業・サービス業・製造業など幅広い業種が対象となり、比較的身近な補助金として知られています。
補助対象には、店舗改装費や外注費、広報費などが含まれます。そのため、オフィス移転やレイアウト変更を、業務効率化や顧客対応力向上と結びつけて説明できれば、オフィス環境整備に関連する経費が対象となるケースもあります。移転そのものではなく、事業の取り組み内容が評価される点が重要でしょう。
申請に当たっては、商工会や商工会議所との連携が求められる場合があります。比較的申請しやすい制度ですが、事業計画の整合性が重視されるため、移転目的と事業効果を丁寧に整理する必要があります。
新分野展開や業態転換に伴う移転に「事業再構築補助金」
事業再構築補助金は、新分野展開や業態転換、事業再編といった大きな方向転換を支援する制度です。単なる延命やコスト削減ではなく、将来に向けた事業の再設計が前提となります。
補助対象となり得る経費には、建物の改修費や機械装置導入費、システム構築費などがあります。オフィス移転が、新事業の立ち上げや事業モデルの転換と結びつく場合、この制度を活用できる可能性があります。
一方で、移転のみを目的とした計画では対象になりにくい点に注意が必要です。比較的規模の大きな投資や明確な事業計画が求められるため、金融機関や専門家と連携しながら準備を進める企業も少なくありません。事業再構築という軸を明確にした上で検討することが重要でしょう。
M&Aや事業承継を機とした移転に「事業承継・引継ぎ補助金」
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継やM&Aを契機とした経営革新を支援する制度です。後継者への引き継ぎや組織再編に伴い、事業基盤を見直す企業を想定しています。
この制度では、設備投資に加え、事務所の改築や移転が対象となるケースがあります。拠点の統合や再配置など、経営方針の転換に伴うオフィス移転と相性がよい点が特徴です。M&A後の業務統合や拠点再編の一環として活用される場面も見られます。
ただし、通常の移転や設備更新では対象外となる可能性があります。事業承継や引き継ぎとの因果関係を明確に示す必要があるため、計画段階から制度要件を意識した整理が欠かせません。
従業員の処遇改善や正社員化を促す「キャリアアップ助成金」
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の処遇改善や正社員化を支援する助成金です。人材の定着や働き方の見直しを目的としており、人事制度と密接に関わる制度といえます。
対象となる取り組みには、正社員化や賃金規定の改定、人事制度の整備などがあります。オフィス移転と同時に、雇用環境や働き方を見直す企業では、制度活用を検討するケースもあります。働きやすいオフィス環境の整備と人材定着をセットで考える視点が重要でしょう。
助成金は要件を満たせば受給できる可能性が高い一方、事前手続きが重視されます。移転すれば受給できる制度ではないため、あくまで雇用・処遇改善が主目的である点を踏まえて検討する必要があります。
オフィス移転時に補助金・助成金を申請する際の3つの注意点
補助金・助成金は、オフィス移転に伴う負担を軽減できる有効な制度です。一方で、資金繰りや実務面に影響を与える側面もあり、事前理解が欠かせません。
制度を十分に把握しないまま進めると、想定外の負担や手戻りが発生する可能性があります。「もらえるなら使いたい」という安易な判断ではなく、総務・経理・経営が連携して検討することが重要でしょう。移転計画は後戻りしにくいため、ここでは事前に知っておくべき前提条件を整理します。
ここからは、代表的な注意点を3つ紹介します。
1.費用は「原則後払い」であり事前資金の確保が必須
補助金・助成金で最も誤解されやすい点が、原則後払いであることです。補助金を使って移転費用を直接支払うことはできません。対象となる内装工事費や設備費、外注費などは、いったん全額を自社で立て替える必要があります。
オフィス移転では支払いが先行しやすく、補助金の入金は事業完了後になるのが一般的です。制度や年度によって異なりますが、申請から入金までに数カ月以上かかるケースもあります。その間の資金繰りを想定せずに進めると、経営に影響が出かねません。
事前に資金計画を立て、必要に応じて金融機関へ相談することが重要です。補助金は資金調達の代替ではなく、後から補填される仕組みだと理解しておきましょう。
2.受給した資金は法人税や所得税の「課税対象」となる
補助金・助成金を受給すると、税務面での影響も発生します。原則として、受け取った資金は課税対象となり、会計上は雑収入として計上されるのが一般的です。
消費税は課税対象外ですが、法人税や所得税には影響します。その結果、受給した年度や翌年度の納税額が増える可能性があります。「補助金が入った分、そのまま手元に残る」と考えていると、想定と異なる結果になるかもしれません。資金計画を立てる際は、税金分を織り込んでおくことが大切です。
事前に税理士や会計担当者へ相談し、自社の場合の影響を確認しておくと安心でしょう。
3.申請書類の作成や実績報告の手間・事務負担が大きい
補助金・助成金の活用には、相応の事務負担が伴います。まず、公募要領を読み込み、申請要件を正確に把握する必要があります。
その上で、事業計画書や各種申請書類を作成しなければなりません。事業完了後も、実績報告書の提出や領収書など証憑の提出が求められます。専任担当者がいない中小企業では、総務や経理に負担が集中しやすい点も見逃せません。書類不備による差し戻しや再提出が発生するリスクもあります。
必要に応じて、社労士や行政書士、コンサルタントなど外部支援を活用する選択肢も検討しましょう。制度活用には準備と体制づくりが必要だと理解することが重要です。
オフィス移転で補助金・助成金を受給するまでの基本フロー

補助金・助成金を活用するには、決められた手順に沿って進める必要があります。思い立ってすぐに受給できる制度ではなく、事前準備から申請、事業実施、受給まで一定の期間を要します。
手順を誤ると、不支給や申請無効になるリスクも否定できません。オフィス移転のスケジュールと補助金申請の流れを並行して管理することが重要です。ここでは基本的なステップを解説します。
ステップ1.自社に適合する制度の選定と公募要領の確認
最初に行うべきは、自社のオフィス移転目的を整理することです。コスト削減なのか、業務効率化や事業拡大なのかによって、選ぶべき制度は変わります。その上で、複数の補助金・助成金を比較検討しましょう。
制度を選定する際は、対象要件や補助対象経費、申請スケジュールを公式Webサイトで必ず確認してください。国の制度だけではなく、自治体独自の支援策が見つかる場合もあります。
注意したいのは「昨年使えたから今年も使える」とは限らない点です。公募要領を読み飛ばすと、対象外経費の計上や申請期限の見落としにつながります。二次情報だけで判断せず、一次情報を確認する姿勢が欠かせません。
ステップ2.事業計画書など必要書類の作成と交付申請
制度を選定したら、事業計画書や見積書、会社情報など必要書類を準備します。このフェーズは最も工数がかかり、計画内容と補助金の目的が論理的に一致しているかが問われます。
多くの制度では、交付決定前に事業を開始してはいけません。契約や発注、支払いを先に行うと、補助対象外になるケースがあります。オフィス移転はスケジュールがタイトになりやすいため、余裕を持った準備が必要でしょう。
要件を満たしていない状態での申請は避けてください。不安がある場合は、支援機関や専門家に相談することで、実務上のミスを防ぎやすくなります。
ステップ3.採択(交付決定)を受けた後に移転事業を実施
補助金・助成金申請で特に注意すべき原則が「交付決定後に事業を開始する」という点です。審査を通過し、採択(交付決定)通知を受け取ってから初めて、補助対象となる事業を進められます。
交付決定前に行った契約や発注、支払いは、原則として補助対象外です。オフィス移転に関わる内装工事や設備導入、外注業務も同様に扱われます。申請中であっても着手してしまうと、不支給になるリスクがあるため注意が必要でしょう。
実務では、交付決定通知の内容を確認した上で、具体的なスケジュールを確定させることが重要です。移転計画と補助金スケジュールを意図的にずらし、フライング着手を防ぐ体制を整えてください。交付決定が全ての起点であると理解することが、失敗を防ぐポイントです。
ステップ4.実績報告書の提出と助成資金の受領
移転事業が完了した後も、補助金・助成金の手続きは続きます。事業完了後には、実績報告書を提出しなければなりません。この報告が承認されて初めて、助成資金を受け取る流れとなります。
実績報告では、領収書や請求書、振込記録など、支払いを証明する書類の提出が求められます。計画内容と実施内容が一致していない場合や、書類に不備がある場合は、差し戻しになる可能性もあります。
また、報告完了から入金までには一定期間を要する点も押さえておきましょう。制度によっては、証憑書類の保管義務が定められている場合もあります。事業が終われば自動的に入金されるわけではなく、最後まで適切な手続きを行うことが重要です。
まとめ
オフィス移転は、単なる場所の変更ではありません。働き方や業務フローを見直し、事業成長や生産性向上につなげる重要な機会です。補助金・助成金を活用すれば、コスト負担を抑えながら、戦略的な移転を進めやすくなります。
一方で、補助金は原則後払いであり、資金計画やスケジュール管理が欠かせません。制度選定から申請、事業実施、実績報告まで、一貫した管理が求められます。自社リソースだけで対応することに不安を感じる担当者も多いでしょう。
そのような場合は、専門業者へ相談するという選択肢もあります。補助金要件を踏まえたレイアウト設計や、移転全体を見据えた進行管理を任せることで、実務負担を軽減できます。
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