オフィス移転にかかる費用の内訳は? 坪単価の目安も紹介
オフィス移転は、企業にとって大きな転機となる重要なプロジェクトです。しかし実際に移転を検討し始めると「どのくらいの費用がかかるのか」「何にどの程度のコストが発生するのか」といった不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、オフィス移転にかかる主な費用の内訳と相場を解説します。目安になる坪単価も紹介するので、オフィス移転をご検討している方はぜひ参考になさってください。
目次
オフィス移転にかかる費用を検討する重要性

オフィス移転は単なる「引っ越し」ではなく、企業の経営戦略や働き方改革の一環として位置付けられる取り組みです。新しいオフィスを構えることで、社員のモチベーションや業務効率の向上、ブランドイメージの刷新など、さまざまな効果が期待できます。
一方で、オフィス移転には多額の費用がかかります。賃貸契約費、新オフィスの内装や設備工事費、旧オフィスの原状回復費、引っ越し費用、そして官公庁や取引先への住所変更手続き費用など、幅広い項目に支出が発生するのが実情です。
これらを事前に整理せずに進めてしまうと、予算オーバーや工期の遅延などのトラブルにつながる恐れがあります。
特に、企業規模が大きくなるほど費用は増大する傾向にあります。移転目的やオフィスのコンセプトを明確にした上で、優先順位を決め、不要な支出を抑えることが重要です。費用を戦略的に検討することで、コスト削減だけでなく、経営資源の最適配分にもつながります。
オフィス移転を成功させるためには、まず費用の全体像を把握し、早い段階で予算設計を行うことが欠かせません。次では、坪単価を使って費用を算出する方法を解説します。
オフィス移転にかかる費用の内訳

オフィス移転にかかる費用は「旧オフィス退去時」「新オフィス構築時」「新オフィス入居時」の3つのタイミングで発生します。どの段階でどのような費用が発生するかを把握しておくことで、無駄な支出を防ぎ、全体の予算を管理しやすくなります。
以下はタイミングごとの費用の内訳を一覧にしたものです。
| タイミング | 主な費用の内訳 |
| 旧オフィス退去時 |
|
| 新オフィス構築時 |
|
| 新オフィス入居時 |
|
これらはあくまで目安であり、企業規模や立地、ビルのグレードによって大きく異なります。正確な金額を把握するためには、複数の専門業者から見積もりを取ることが重要です。
ここからは、タイミングごとにかかる費用の内訳と目安を紹介します。
旧オフィス退去時の費用
オフィスを退去する際には、原状回復工事や不用品の処理、引っ越し作業など、複数のコストが同時に発生します。特にビル側が指定する施工業者を利用する場合や、什器・設備の撤去が多い場合は、費用が想定より高くなることもあります。
ここからは、退去時に発生する代表的な費用の内訳を見ていきましょう。
引っ越し費用
オフィスの引っ越し費用は、書類やOA機器、什器などの運搬費を中心に構成されます。費用は荷物量や移動距離、作業時期によって大きく変動します。
相場の目安としては、社員1人当たり2万〜5万円、平均で3万円前後が一般的です。繁忙期(1〜3月・9〜12月)は通常よりも1.5倍ほど高くなることもあります。
また金庫や美術品、大型コピー機などの重量物や特殊機器は、専門の運搬業者への依頼が必要です。一般の引っ越し業者では対応できない場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
荷物の仕分けや不用品の処分も同時に行う場合は、廃棄費用を含めたトータル見積もりを早い段階で取得するのが理想です。作業動線の確保や荷物のラベリングなど、事前準備を整えることでスムーズに進められます。
原状回復費用
原状回復費用とは、退去時にオフィスを入居前の状態に戻すための工事費用を指します。具体的には、パーティションや造作壁の撤去、床や壁、天井の補修、照明や配線の撤去、クリーニングなどが含まれます。
費用の相場は、一般的なオフィスで1坪当たり3万〜5万円程度、大規模オフィスでは10万〜20万円ほどかかる場合もあります。例えば100坪のオフィスで坪単価10万円とすると、約1,000万円が必要です。
多くのビルでは、原状回復工事をビル指定業者が請け負うケースが多く、費用が割高になる傾向があります。契約時に原状回復範囲を確認し、施工範囲や仕様について交渉することでコストを抑えられる可能性があります。
契約内容によって工事範囲が異なるため、退去時期が近づく前に条件を再確認しておくことが重要です。
不用品廃棄・回収費用の目安
オフィス移転に伴い、使わなくなった什器やOA機器などを処分する場合、産業廃棄物として廃棄する必要があります。この際に発生するのが「不用品廃棄・回収費用」です。
費用の目安は、2tトラック1台分で7万〜8万円、4tトラック1台分で12万〜15万円程度です。廃棄物の量や種類によって変動するため、事前に廃棄対象を整理し、業者に現地見積もりを依頼することが推奨されます。
なお産業廃棄物処理法に基づき、廃棄を依頼する際はマニフェスト(管理票)の発行が必要です。また不要なオフィス家具や備品の中には再利用や買い取りが可能なものもあります。リサイクル業者に相談すれば、廃棄コストを削減できる場合があります。書類を処分する際には、情報漏えい防止のため溶解処理サービスの利用もおすすめです。
移転準備の段階で「何を残し、何を処分するか」を明確にしておくことが、コスト削減と作業効率化の鍵となります。
新オフィス構築の費用
新しいオフィスを整えるためには、内装・什器・インフラなど、さまざまな構築費用が発生します。これらは移転プロジェクト全体の中でも金額が大きく、移転後の働きやすさや企業イメージを左右する重要な投資です。
また働き方改革やハイブリッドワークなどの目的に合わせてレイアウト設計の方向性を変える企業も増えています。次の見出しでは、それぞれの費用の内訳と相場を詳しく見ていきましょう。
内装工事費用
オフィスの内装工事費用には、床・壁・天井の仕上げ、パーティションや会議室の設置、造作家具の製作などが含まれます。空間の印象を決める重要な工程であり、費用の中心となる部分です。
相場は1坪当たり5万〜20万円が一般的で、平均すると10万円前後です。スケルトン物件では20万〜30万円、居抜き物件では10万〜20万円程度が目安とされています。例えば「面積(坪)×10万円」で概算すると全体感をつかみやすいでしょう。
なお、内装工事にはA・B・Cの3つの区分があります。
- ・A工事:ビルオーナー負担(ビル本体部分の工事)
- ・B工事:入居者負担で指定業者が施工(費用が高くなりやすい)
- ・C工事:入居者が自由に業者を選べる(費用を抑えやすい)
この区分を理解しておくと、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。特にC工事を中心に計画を立てると、コストコントロールの余地が広がります。反対にB工事では、指定業者の制約で、レイアウト変更や工期調整に柔軟性が欠けることもあるため留意しておきましょう。
契約前に工事区分と施工範囲を確認しておくことで、想定外の出費を防ぎ、効率的なレイアウト構築が可能になります。
什器・家具の購入費用
オフィス移転に当たって、新しい環境に合わせた什器や家具を整える費用も発生します。デスク・チェア・収納・会議テーブル・カウンターなど、用途に応じた備品を揃えることが必要です。
相場は1人当たり5〜20万円が目安で、平均では10万円前後です。規模やデザイン方針によっては、20〜30万円に達することもあります。例えば「従業員数 × 5万円」でおおよその予算を見積もると分かりやすいでしょう。
最近では、上下昇降デスクやパーティションの導入など、従業員の健康・快適性を意識したレイアウト設計が増えています。また企業ブランディングの一環として、カラーや素材を統一するケースも多く見られるようになりました。
一方で、中古・リユース家具を活用することでコストを抑える企業もあります。耐久性の高いオフィス家具は再利用が容易なため、環境配慮やSDGsの観点からも注目されています。
家具選びではデザイン性と実務性のバランスを取りながら、長期的な使いやすさも考慮することが大切です。
インフラ・ネットワーク工事費用
オフィスのインフラ整備は、日常業務を支える基盤です。LANや電話、電気設備、Wi-Fi、サーバー、防犯カメラなど、さまざまな設備の設計と工事が必要になります。
費用相場は1人当たり5万〜15万円前後が一般的です。電話機などの移設費は1端末当たり2万〜5万円、LAN配線工事は1坪当たり1万〜2万円、または1人当たり5万〜8万円が目安とされています。ネットワークポート単位で計算する場合は、1ポート当たり2.5万〜4万円で試算できます。
中規模以上のオフィスでは、サーバー移設やセキュリティ設備の強化工事が加わる場合もあり、全体費用はさらに上がります。通信や電源のトラブルは業務に直結するため、専門業者に依頼して安全性と安定性を確保することが重要です。
またネットワーク切替のタイミングは業務への影響を最小限に抑えるよう計画しましょう。事前のテスト運用や段階的な導入を行うことで、移転直後のトラブルを防げます。
インフラ工事は目に見えにくい部分ですが、快適で安定した業務環境を維持するための欠かせない投資です。
新オフィス入居時の費用
新オフィスへ入居する際には、賃貸契約に関わる費用が一度に発生します。また旧オフィスの賃貸期間が重なる場合、賃料の二重支払いが発生することもあります。
次の見出しでは、賃貸契約に関する主な費用の内訳を具体的に見ていきましょう。
賃料・共益費
オフィス賃料は「面積(坪)× 坪単価」で概算できます。坪単価の目安は、立地やビルのグレードによって1.5万〜5万円と幅広く、都心の一等地では5万円を超えるケースも少なくありません。共益費を含めた坪単価として提示される場合も多いため、契約前に「賃料」と「共益費」が別かどうかを確認しておくことが大切です。
初期費用としては、前賃料と共益費の2カ月分程度を支払うのが一般的です。例えば20坪のオフィスを坪単価3万円で借りる場合、月額賃料は60万円、初期支払い額は約120万円前後となります。
共益費とは、エレベーター・廊下・トイレなど共用部分の維持管理に充てられる費用で、賃料とは別枠で設定されることもあります。入居・退去のタイミングによっては旧オフィスの賃料と重なる場合があるため、契約スケジュールを慎重に調整しましょう。
敷金(保証金)・礼金
敷金(または保証金)は、貸主に預ける担保金であり、賃料未納や退去時の損害補償などに備えるためのものです。契約終了時には原状回復費などを差し引いた上で返還されます。
相場はオフィス規模によって異なり、50坪未満の小規模オフィスでは賃料の4〜6カ月分、50坪以上では6〜12カ月分が目安です。大規模オフィスやハイグレードオフィスビルでは、賃料12カ月分前後の保証金が必要となる場合もあります。
礼金は貸主への謝礼として支払うもので、賃料の1〜3カ月分が一般的です。近年では法人契約で礼金不要の物件も増えていますが、条件交渉の際には事前確認が欠かせません。
敷金を多めに預けることで、家賃交渉を有利に進められるケースもあります。一方で、敷金・礼金はまとまった金額になるため、資金繰りを見越した計画的な準備が必要です。
仲介手数料・保証会社費用・火災保険料
オフィス契約時には、賃料以外にもいくつかの諸費用が発生します。その代表例が、仲介手数料・保証会社費用・火災保険料です。
仲介手数料は、不動産仲介業者を利用した際に支払う手数料で、一般的に賃料の1カ月分が相場です。ただし、半月分や無料とするケースもあり、契約形態や仲介会社によって異なります。
保証会社費用は、敷金を抑えたい企業や連帯保証人を立てにくい場合に利用されます。相場は賃料の1〜3カ月分で、契約更新時に再審査や更新料がかかるケースもあります。
火災保険料は、入居時に必ず加入が求められる費用で、2年契約でおよそ3万円前後が目安です。保険の補償範囲は設備・備品の損害だけでなく、第三者への損害賠償も含む場合があるため内容を確認しておきましょう。
これらの費用は一度に発生するので、初期費用としてまとめて計上しておくことが大切です。契約前に見積もりを取り、全体の支出を把握しておくことで、移転後の資金負担を軽減できます。
その他の諸経費
オフィス移転では、引っ越しや工事費用の他に、手続きや印刷物の更新など細かな諸経費も発生します。これらは見落とされがちですが、積み重なると意外に大きな金額になるため注意が必要です。
まず、住所変更に伴う印刷物の改訂費があります。名刺・封筒・パンフレット・会社案内・Webサイトなど、各種ツールの住所を更新する必要があり、1人当たり1万〜2万円程度が目安です。特に営業資料や会社案内などはデザイン修正費が加わるため、余裕を持った予算設定が望まれます。
また法務局・税務署・年金事務所・労働基準監督署・ハローワークなど、公的機関への住所変更手続きにも費用が発生します。例えば、本店移転登記にかかる登録免許税は3万〜6万円程度が一般的です。司法書士や行政書士に依頼する場合、依頼内容によっては数万〜20万円前後の報酬がかかることもあります。
さらに、銀行口座・クレジットカード・取引先などへの住所変更連絡も忘れずに行いましょう。社内では「住所変更タスクリスト」を作成しておくと、漏れを防ぎスムーズに対応できます。
こうした手続き関連費用も「見えにくいコスト」として事前に把握し、全体予算に組み込んでおくことが大切です。
まとめ
オフィス移転の費用は「旧オフィスの退去費用」「新オフィスの構築費用」「新オフィスの入居費用」に分けて整理すると、全体像を把握しやすくなります。退去時には原状回復や引っ越し、新オフィス構築では内装・什器・インフラ、入居時には敷金や礼金などの初期費用が発生します。さらに、印刷物や各種手続きなどの諸経費も見落とせません。
費用の概算は「面積(坪)×坪単価」で試算すると分かりやすく、複数業者から見積もりを取ることでより精度を高められます。移転の目的や規模に応じて、どの部分に重点を置くかを明確にすることが成功の鍵です。
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